At the 13th Conference on Facilitating Entry into Force of the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (Article XIV Conference) at the United Nations in New York on 22 September 2023 global leaders reaffirmed their commitment to making the CTBT legally binding on an international scale and bringing an end to nuclear testing once and for all. Credit: CTBTO
At the 13th Conference on Facilitating Entry into Force of the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (Article XIV Conference) at the United Nations in New York on 22 September 2023 global leaders reaffirmed their commitment to making the CTBT legally binding on an international scale and bringing an end to nuclear testing once and for all. Credit: CTBTO

|ロシア|包括的核実験禁止条約批准取り消しに非難集まる

【国連IDN=タリフ・ディーン】

包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を取り消すとの10月18日のロシア議会の決定に対する厳しい批判が集まっている。

潘基文元国連事務総長は、ロシア議会によるCTBT批准取り消しの決定直後に出した声明の中で、「これによって国際的な軍備管理枠組みはさらに損なわれ、核実験に対する世界的なタブーが破られる危険が高まった。困惑している。」と語った。

「私は、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会の元委員長として、CTBTの締約国となっていないロシアやその他6つの核保有国に対して、核実験再開への措置を採ることのないように求める。」

「国際的な緊張が強まり、核紛争の脅威が高まっている時代にあって、核保有国のすべての指導者は対話と関与を促進しなくてはならない。」

「これこそが核のリスクを管理し、グローバル規範のさらなる劣化を防ぐ唯一の手段だ。」と潘氏は述べた。同氏は現在、故ネルソン・マンデラ氏が2007年に創設し、年長の政治家、平和活動家、人権擁護者であった公人の国際的な非政府組織である「ザ・エルダーズ」の副議長を務めている。

国際通信社ロイターは10月6日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核実験再開の可能性を示し、CTBT批准の取り消しへと速やかに向かうことを示唆したと報じた。

プーチン大統領は、それによって自身が核のボタンを押すことになる条件を示した核のドクトリンに変更の必要を認めないが、核実験再開の必要があるかどうかについて今のところコメントできないと述べたとされる。

プーチン大統領は、「米国はCTBTに署名しながら批准していないのだから、ロシアは同条約の批准を取り消すことになるかもしれない。」と語った。

ニューヨーク・タイムズの10月8日付紙面では、プーチン大統領が、ロシアは原子力推進巡航ミサイルの実験に成功したと述べる一方で、CTBT批准を取り消す可能性をちらつかせていると報じた。

 

他方、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、CTBT批准を取り消したロシア議会の法案は、条約の検証体制や履行機関との協力に関する条項を盛り込んでいる、と指摘した。

同法は、条約を批准した2000年の国内法の第1条を廃止した。2000年法は、CTBTを批准し、国際監視システムやCTBTOとの協力を規定したものだ。

1996年に採択されたCTBTはすべての核実験を禁止する初の国際法だ。条約は署名国187、批准国178を数えるが、その批准が条約発効の条件となっている国のうち8カ国(中国・北朝鮮・エジプト・インド・イラン・イスラエル・パキスタン・米国)が未批准のため、未だ発効していない。

ICANのメリッサ・パーク事務局長はロシアの動きを批判してこう述べた。「ロシアは今すぐに無責任な決定を取り消すべきだ。CTBTや核兵器禁止条約を含めた国際条約は、人々の健康を破壊し永続的な放射能汚染をまき散らしてきた核実験が再開されないためにきわめて重要な役割を果たしている。ロシアは、CTBTへのコミットメントを取り戻し、CTBTや核禁条約に参加していない国は緊急に参加すべきであると訴えたい。」

米国のやり方を模倣する

ICANは、ロシア議会の動きは、同国のウラジーミル・プーチン大統領がCTBT脱退を示唆した直後になされたと指摘した。プーチン大統領は10月6日、CTBTに関連して、「米国のやり方を模倣すること」が望ましいとの見解を示していた。米国は条約に署名しているが批准していない。こうしてロシアは条約批准を取り消した。

プーチン大統領はさらに「これはドゥーマ(ロシア下院)が決めることだ。理論的には批准取り消しもありえる。」と述べていた。

10月9日、ドゥーマの国際関係委員会は、外務省と連絡を取ってCTBT批准取り消しの問題を検討するよう要請されていた。

ICANによれば、ロシアには、ウィーン条約法条約第18条に従って、条約署名国としてCTBTの目標及び目的を損なうような行動を慎む責任が依然としてある。

「核実験は世界中で、人間や環境に壊滅的な影響をもたらしてきた。旧ソ連が北極圏や東欧、アジアで行ってきた数百回に及ぶ核実験は、医療・心理・社会経済的なトラウマを引き起こし、多くの先住民族を居住地から追い出し、放射能で環境を汚染し数世代に及ぶ悪影響を残してきた。」とICANは述べている。(11.01.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews