mage: 'ICAN Act on It Forum' in Oslo. Credit: ICAN
mage: 'ICAN Act on It Forum' in Oslo. Credit: ICAN

欧州議会議員ら核軍縮促進を呼びかけ

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

欧州議会議員らが、核軍縮に向けた「具体的な措置」を取り、これを「2023年の優先事項」とする必要性を強調している。これは、核兵器を絶対悪のものとし、2021年1月22日に発効した国連核兵器禁止(核禁)条約のような軍縮諸条約を強化する取り組みへの補完になると議員らは考えている。

3月9・10両日にノルウェーのオスロで開催された「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)市民社会フォーラム」では、ベルギー・デンマーク・ドイツ・アイスランド・ノルウェー・スコットランド・スロベニア・スウェーデンの欧州8カ国から17人の欧州議会議員が参加し、核軍縮を進める上で議員の重要な役割が強調された。

会議は、ノルウェーのキリスト教民主党と自由党、社会主義左翼党が共催した。

参加議員らは総括声明で、「安全保障戦略における核兵器の役割を減らし、核の脅威を継続的に非難し、G7の同盟パートナーに対し、象徴的な都市である広島で(5月に開催される)2023年G7サミットを核軍縮協議の出発点とすべきことを各国政府に」呼びかけた。

総括声明にはさらに、核軍縮と核禁条約の推進、そして「核兵器のない世界の実現」に向けた議員としての役割について議論するためにここに集ったと記されている。議員らは、各国の状況や立場を説明し、核軍縮に向けたさらに大胆かつ具体的な行動を促すための意見交換を行った。

まとめ声明はさらに、ノルウェーが「第1回核兵器の人道的影響に関する国際会議」を主催してから10年が経過したと指摘した。こうした動きを受けて成立した核禁条約は、現在署名国92、締約国68を数え、国際法によって核兵器を禁止している。

「核禁条約は、核使用のリスクが高まり、核使用のタブーが損なわれつつある現在、核軍縮・不拡散体制の強化に資する重要なツールである。ロシア政府による核使用の威嚇によってウクライナに仕掛けられた違法かつ残虐な戦争は、核兵器に伴う容認不可能なリスクを白日の下に晒した。私たちは、あらゆる核使用の脅威を明確に非難し、世界の完全な核軍縮を通じて、核兵器が二度と使用されないようにすることを指導者や政治家に強く求める。」

議員らは、核シェアリングの取り決めを含め、核政策において透明性が欠けていることを議論した。また、核不拡散条約(NPT)の補完となる核禁条約は、この目的を達成するための最も包括的な法的ツールであると指摘したうえで、各国政府に対して、核禁条約の普遍化を図り、早期に同条約に参加するよう呼びかけた。

議員らは、核禁条約の発効と、2022年6月にウィーンで開催された同条約に関する第1回締約国会議の成功を歓迎した。この会議において締約国は、NPT締約国としての取り組みを補完する形で、軍縮レジームを強化する大胆な計画に踏み出すことに合意した。

核禁条約は、核兵器使用の威嚇を禁止する唯一の条約として、また、あらゆる核の脅威に対する締約国の強い非難を通じて、数十年に及ぶ核使用のタブーを強化する方法について国際社会に模範を示した、と議員らは主張した。

議員らは、核禁条約の第一回締約国会合にオブザーバーとして参加した国々の建設的な関与を称賛し、他のすべての非締約国に対して、条約の署名・批准に向けた中間的なステップとして第2回締約国会合にオブザーバー参加するよう訴えた。

「私たちは、各々の政府に対して、とりわけ核禁条約の第6条・7条に定めた被害者支援と環境修復の分野において締約国と協働するオプションを探るよう求めます。」

ICANがオスロで開いた「市民社会フォーラム」には、専門家や活動家、パートナーが世界各国から2日間にわたって集い、「核兵器に加担している国々」に対して核軍縮と核禁条約の重要性を訴えるために利用できる説得材料やツールについて意見交換を行った。

「核兵器に加担している国々」は自前の核兵器を持っているとは限らない。それでもなお、核軍縮に賛同するふりをしながら、自国の国家安全保障政策において核兵器の役割を積極的に是認することで、現状維持に一役買っているのである。実際には、これらの国々が軍縮運動の支援することはほとんどない。

ベルギー・ドイツ・イタリア・オランダ・トルコの5カ国はいずれも領内における米国の核配備を認めている。さらに、(この5カ国に加え)29カ国が、北大西洋条約機構(NATO)や集団安全保障条約機構(CSTO)などの防衛同盟の一環として、自国のための核兵器使用の可能性を認めることによって、核兵器の保有と使用を「是認」している。

これら合計で34の「核兵器に加担している国々」は、アルバニア・アルメニア・オーストラリア・ベラルーシ・ベルギー・ブルガリア・カナダ・クロアチア・チェコ・デンマーク・エストニア・フィンランド・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・アイスランド・イタリア・日本・ラトビア・リトアニア・ルクセンブルク・モンテネグロ・オランダ・北マケドニア・ノルウェー・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・スロバキア・スロベニア・韓国・スペイン・スウェーデン・トルコである。

この暗澹たる状況を背景に、核禁条約締約国や都市、市民社会、議会、[核被害の]生存者、その他専門家、活動家の代表が、2017年にノーベル平和賞を受賞したICANが組織した今回のフォーラムで、「核兵器に加担している国々」をその時代遅れで警戒すべき姿勢から遠ざける方法と手段に関して議論した。

彼らには、核兵器がこれまでの兵器の中で最も破壊的で、最も非人道的かつ非差別的であるという信念がある。人間がこれにまともに対応することなどできない。「容認できないリスクがあるからこそ、私たちは行動をおこさねばなりません。」と議員らは訴えた。(03.12.2023) INPS Japan/ IDN-InDepthNews